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浜松市の
大規模既存集落制度をみる

(不動産だより2009.6月号掲載)

 市街化調整区域といえば、開発が制限され、建築は農家住宅やその関連施設、許可を得た特定の建築物などに限られ、一般的な建築はできないことになっている。
 しかし最近では「大規模既存集落の自己用住宅」という言葉をよく耳にするようになり、市街化調整区域でも持ち家がなく20年以上住んでいた人には、同集落内に建築が可能になるなど、許可要件の緩和が進んでいた。
 この大規模既存集落内の住宅建築に関しては、規制緩和にともない昭和61年8月旧建設省から出された通達により、翌62年9月から県で定めた基準に従い運用されていた。そして平成12年4月1日以降は、運用基準の見直しをして都市計画法の枠組み内で市の開発審議会で付議されることになったという経緯がある。
 現在の大規模既存集落制度は、市町村合併後の地域性を踏まえて、平成19年度に策定した「市街化調整区域における開発許可制度の基本方針」に基づき、新たな許可基準を定めて平成21年4月1日より施行している。

旧浜松市内21カ所と浜北・引佐・三ケ日町の「一般集落」「特例集落」が対象

 大規模既存集落制度は、旧浜松市の市街化調整区域内にある21カ所の既存集落内に20年以上住んでいた人を対象に、持ち家がないことを要件として、同集落内に自己用住宅の建築を認めた制度だ。
 しかしこの制度は、平成17年の市町村合併前に定めたもので、旧浜松市の市街化調整区域のみの適用となっていた。合併後の現在は、旧町村の中心であった集落が郊外部にも多く存在することになり、市街化調整区域の政策的利用が求められていた。
 浜松市は、今回の見直しによって旧浜松市内の21カ所から、現在の市域全域に亘る市街化調整区域にエリアを拡大。エリアの指定にあたっては、新規の都市的投資が発生しないよう、すでに地域コミュニティが形成され、かつ生活基盤が整っている既存集落とし、おおむね150戸以上の集落を「一般集落」、中山間地(都田川より北の北区)にあるおおむね50戸以上の集落を「特例集落」と定め、2種類の基準を設けて大規模既存集落を設定した。(図A、図B参照)
 これまで課題とされていた、制度の不均衡、他集落への建築、地域性の考慮、指定区域の明確化、建築許可基準などを改め、集住(集めて住む:都市のコンパクト化)へと誘導できる制度に改善されている。

浜松市ホームページ:
大規模既存集落(一般集落)全体図および詳細図はこちら

浜松市の大規模既存集落内
販売物件一覧はこちら

 

新制度では大規模既存集落外の居住者も対象に

 大規模既存集落の建築許可基準についてみてみよう。(表1参照)ポイントは1・対象者(申請者)、2・土地、3・敷地、4・建築物だ。
 これまでの基準では、対象者(申請者)は、大規模既存集落内の居住者または居住者の子とした上で、「大規模既存集落内に昭和47年1月11日以降延べ20年以上居住していて、現在も1年以上居住していること」「持ち家がないこと」「世帯を有していること」を要件としていた。しかし、見直し後は居住実績などの要件は変わらないが、集落外居住者の集落への集住促進と地域への定着を重視して、対象者(申請者)を大規模既存集落がある連合自治会区内の居住者または居住者の子とし、集落と同じ連合自治会区の居住者であれば、大規模既存集落外の居住者(市街化区域の居住者を除く)も対象とした。
 そして土地については、これまで建築予定地は居住している大規模既存集落内で、連続集落内であれば連合自治会区を超えた建築も可能としていた。しかし、見直し後は地域コミュニティの維持から、建築予定地は申請者または申請者の親が昭和47年1月11日以降延べ20年以上居住していて、現在も1年以上居住している連合自治会の区域内にある大規模既存集落内の土地とし、連合自治会区を超えた建築は規制することとした。(図2・3参照)
 敷地については、許可要件200m2以上500m2未満であることに変わりないが、進入路のある旗竿地については接道幅基準を強化した。建築基準法の規定では接道幅は2m以上あればよいことになっているものの、車を置くと人が通れないことや、不良宅地形成の防止を理由に接道幅を3m以上とした。(図4・5参照)
 また今回の見直しに合わせて、大規模既存集落の分家住宅制度は自己用住宅制度に編入することで廃止した。分家住宅制度は、これまで申請者が集落内の居住要件(20年実績・1年在住)を満たさない場合、親が居住(20年実績・1年在住)している大規模既存集落に建てるときは、親が所有する土地が条件だった。編入後は親が所有する土地でなくても、連合自治会区内の大規模既存集落内に土地を買って家を建てられるようにした。

■連合自治会区とは
昭和30年代の市町村大合併前の各町村として地域コミュニティを形成していた単位。(例えば初生町、根洗町、三方原町、東三方町、豊岡町、大原町、三幸町は三方原地区、伊左地町、佐浜町、大人見町、古人見町は伊佐見地区に該当。すべての町はいずれかの連合自治会区に属する。

■建てようとする土地が農地の場合
(1)その農地が青地農地か白地農地かの確認が必要です。(市役所農業水産課で確認)
●青地農地の場合(法律で定められた農業を振興する農地で原則転用はできません。)@青地農地から除外(白地農地に)できるか確認が必要です。(中区・東区・南区⇒農業水産課、その他の区⇒各区役所産業振興課で確認)A宅地に農地転用できる農地か確認が必要です。(各農業委員会で確認)
●白地農地の場合 … 宅地に農地転用できる農地か確認が必要です。
(2)建築基準法による道路に3m以上接している土地か確認が必要です。(市役所建築行政課で確認)

■2項道路とは
幅員4メートル未満の道路で、特定行政庁の指定した道路に接する土地に建物を建てる場合は、道路の中心線から水平距離にして2メートル後退(セットバック)した線をその道路と敷地の境界線とみなしている。

図A

図B

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